武道館を読んで(テッペンってなんやねん編)

読書感想文なんか二万年ぶりに書くんですけど、ちょっと思うところがあったのでメモします。

朝井リョウさんの武道館は、歌って踊ることがただ大好きなアイドル愛子と幼馴染の大地のことがただ大好きな一高校3年生愛子というどちらも自分でありながら両立に悩む女の子のお話です。繊細なワードチョイスとよくできた比喩で彼女の心情が痛いほどに伝わってくる小説でした。

なかでもすごく心に残ったのが、メンバーの碧が二人でPAの温泉に入った後涼んでいた時に放った一言でした。「武道館って何なのかよくわかってないんだよね。(中略)アイドルは武道館目指して当然みたいな雰囲気に呑まれているだけというか。」と彼女は言いました。もちろんそれは彼女の芸能事務所入所の背景だったり性格だったり色々な要素があってのことですが、その後愛子の恋愛が進展するときふと言った「自分たちはこれまでずっと、自分ではない誰かが決めたことをまるで自分たちで決めたかのように、何の抵抗もなくそのまま受け入れてきた。」という言葉とつながっている気がしました。

最近中間淳太、テッペンあきらめる?!みたいな感じで炎上しましたよね。彼はラジオで、デビュー当時のようにがむしゃらにテッペンを目指しているわけではなく、今のメンバーと楽しく笑い合っていることが大事だと言いました。もちろんそれは間違いではないし(多少淳太君の言葉不足はあったでしょうけど)まっとうな意見だと思います。一部のファンは「テッペンを目指すジャニストが好きだった」「ぬるま湯につかって満足している」「ジャニーズWESTは調子に乗っている」という風に好きかって言いましたが、ジャニーズWESTを見て向上心があるように見えないならいったい何を見てきたのかわからないし、淳太君はあくまでも優先順位が少し変わったという風に言いたかっただけのように見えたのでだいぶ過剰に反応してしまった人が多いのではないかと感じました。

それはさておき、デビュー当時から呪文のように唱えてきた「テッペン」に行くというものは誰が言いだして、誰が決めたものなのでしょうか。そもそも「テッペン」の定義とはなんなのか、それを目指すのがアイドルのあるべき姿という考えが広まったのは誰からなのでしょうか。そんな漠然とした言葉を追い続けるうちに自分が好きだと思える仕事に出会ったり、メンバー同士とのグループとしての結束力が上がったりした結果、靄が晴れるように「テッペン」という言葉の幻に気が付いたのではないでしょうか。自分ではない誰かが決めた「テッペン」をやみくもに目指すことの無意味さに気づいたのであれば、ジャニーズWESTとしての大きな一歩になったのではないかなと逆に思います。

前に小瀧望一万字インタビューで言っていたことが強く印象に残っています。ジャニーズWESTはどうなっていきたいの?とプロデューサーに聞かれたとき誰一人パッと答えることができなかった、ということが記されていて、それは彼らにとって大きな衝撃であり、ターニングポイントだったんじゃないかなと思いました。普通は突っ走っている最中の自分というのはよく見えないものですが、いかに自分たちの描く将来が曖昧なものだったかに気づけたのではないでしょうか。

たぶん彼らに聞けば「テッペン像」というものははっきりとわかってくると思うんです。かっこよくて面白くて、国民的に知れ渡っていて、冠番組をいくつも持っていて、ドラマや映画の出演が次々と決まっていて...いくらでも出てくると思います。しかしそれが自分たちの最重要項なのか、それが自分たちの思い描く将来なのかといわれるとそうではないのではないかと思います。その結果出てきた本来の将来像のが「メンバー全員で笑い続けてあほなことをし続けること」だったのだと思います。

全員でイメージが固まったジャニーズWESTはここから強いと思います。個々の強みを生かした個人の仕事を確約しつつ(照史君マリウス主演おめでとう!)、グループで集まったときはあほなことしてファンに元気を与える、という事が全員の認識の中にあるのですから!まだまだ手の届かない、見えないところにあり続ける「テッペン」という名のまやかしにすがり続ける必要はないのです。

実はアイドルグループの存在を一番脅かすものって認識の違いなんじゃないかと思います。思い描くアイドル像、職業に対する哲学、自分の価値観など、バラバラであることは構わないのですが、それを見失ってしまったりお互いでそれらを認め合ったりできないときが一番危険なんじゃないかと思います。フォームやスピードが違っても同じ方向に走り続けることがグループを存続させるのに最も大事な役割を担っているのです。しかしそれさえ固まれば自分にどのような能力が備わっていて、何がこれから必要で、自分がどのようなポジションで動いていけばいいのかが必然的にわかるはずです。その認識がようやく固まってきたジャニーズWESTはこれからどのように自らの道を切り開いていくのか、楽しみで仕方ありません。